Synologyのエントリーモデルの4ドライブベイであるDS420jとDS420+、DS920+が発売され、2020年モデルもある程度そろってきました。DS420はエントリークラス、DS420+、DS920+はフラッグシップモデルとなりますが、どのような違いがあるか調査しました。
以下は過去のDS420+、DS920+発売時のDS+シリーズ内での比較記事となります。
CONTENTS
Synology Diskstationの各グレード
Synology NASは7つの異なるクラスのシリーズを展開しています。各クラスは、購入者の予算や必要スペックに合わせて最適なNASを選択できるように設定されています。
NASの型番は3桁で、一番上の位がドライブベイ数、下二桁が西暦の下二桁となります。ドライブベイ数は拡張ベイ込みの数字となっており、「DS920+」は4ベイ+拡張5ベイで合計9ベイ扱いとなり、「9」となります。
グレードとしては安価な物(低スペック)から高価な物(高スペック)までJ、VALUE、PLAY、PLUS、XS+/XS、DS、FSと並んでいます。エンタープライズ向け3機種(XS+/XS、DS、FS)を除くと、PLUSは最上位のフラッグシップ機となり、様々な機能が詰め込まれた製品シリーズとなります。
今回はこのJシリーズの中で大容量に対応した4ベイモデルとPlusシリーズの4ベイモデルを比較しています。
DS420j VS DS420+ VS DS920+
スペック
Jと+シリーズでの違いとしては主に以下の内容になります。
- CPUの性能とメモリ容量
- ファイルシステムの対応
- ホットスワップ
- SSD対応
- NIC数
- 共同作業ツール最大ユーザー数
- サーバー機能、iOS/Androidアプリ対応
- ユーザー、グループ数
- IPカメラ最大接続数
この中で一番NASとして影響が大きいのはCPU、メモリ性能になります。DS420jはRealtek RTD1296の4コア、1.4GHzでメモリは1GBですが、DS420+のCeleron J4025は2コア、2.0GHzのメモリ2GBとなります。
NASで同時に様々な処理を行う場合はメモリは最低1GB程度欲しいので、DS220jのメモリ512MBと異なり、必要なスペックは満たしていると言えます。しかし、DS420jはエントリークラスのため、メモリ拡張不可であり、さらに並列処理や重い処理、例えばサーバ機能やMomentsのAIでの画像分類などを使用する場合は少しスペック不足を感じます。
DS420+はCPU性能だけでなく、メモリも2GBあり、サーバー機能、iOS/Androidアプリ対応でもほぼフルで使用できます。ただ追加で8,000円出すと、DS920+に手が届きます。
DS920+はCeleron J4125は4コアとCeleron J4025は2コアの1.5倍程度の能力差があり、またメモリも4GB搭載しています。そのため、並列処理や拡張性でDS420+よりDS920+の方がかなり優位です。DS420+を買える予算があるならDS920+に手を出してもいいのではないかと思います。
型番 | DS420j | DS420+ | DS920+ |
---|---|---|---|
メーカー | Synology | ||
価格 | 37,400円 | 58,900円 | 66,900円 |
発売日 | 2020年3月13日 | 2020年5月17日 | |
CPU | Realtek RTD1296 1.4GHz Quad-Core | Intel Celeron J4025 2.0GHz Dual-Core | Intel Celeron J4125 2.0GHz Quad-Core |
メモリ | 1 GB DDR4 | 2GB DDR4 | 4GB DDR4 |
最大メモリ | 1 GB | 6GB | 8GB |
ドライブ ベイ | 4 | ||
ファイルシステム | EXT4 | Btrfs / EXT4 | |
対応RAID | Hybrid RAID / Basic / JBOD / 0 / 1 / 5 / 6 / 10 | ||
互換性のあるドライブ タイプ | x 3.5" または 2.5" SATA HDD/SSD | ||
ホットスワップ | - | 対応 | |
SSDキャッシュ | - | 対応 | |
ハードウェア暗号化 | あり | あり (AES-NI) | |
read性能 | - | 226 | 225.99 |
write性能 | - | 225.74 | 225.9 |
read性能(暗号化) | - | 226 | 225.99 |
write性能(暗号化) | - | 224.47 | 225.91 |
NIC | 1(1GbE) | 2(1GbE) | |
外部ポート | USB 3.0 ポート x 2 | USB 3.0 ポート x 2 eSATA ポート x 1 | |
システムファン | 80mm x 2 | 92mm x 2 | |
ノイズレベル | 20.6 dB(A) | 19.8 dB(A) | 19.8 dB(A) |
消費電力 | 21.71 W | 28.30 W | 32.17 W |
幅 x 高さ x 奥行き[mm] | 168 x 230 x 184 | 199 x 223 x 166 | 199 x 223 x 166 |
重さ | 2.21 kg | 2.18 kg | 2.24 kg |
ネットワーク プロトコル | SMB、AFP、NFS、FTP、WebDAV、CalDAV、iSCSI、Telnet、SSH、SNMP、VPN(PPTP、OpenVPN、L2TP) | SMB、AFP、NFS、FTP、WebDAV、CalDAV、iSCSI、Telnet、SSH、SNMP、VPN(PPTP、OpenVPN、L2TP) | |
セキュリティ | ファイアウォール、共有フォルダ暗号化、SMB 暗号化、FTP over SSL/TLS, SFTP、rsync over SSH、ログイン自動ブロック、Let's Encrypt サポート、HTTPS (カスタマイズ可能な Cipher Suite) | ||
仮想化 | - | VMware vSphere 6.5、Microsoft Hyper-V、Citrix、OpenStack | |
マルチメディア | Moments、Video Station、Photo Station、Audio Station、iTunes Server | ||
オールインワンサーバー | VPN Server、Mail Server 、Mail Station、Web Station、その他のパッケージ | Synology Directory Server、Central Management System、VPN Server、Mail Server 、Mail Station、SMTP サーバー、Web Station、その他のパッケージ | |
iOS/Android アプリケーション | Synology Drive、DS audio、DS photo、DS video、DS cam、DS le、DS nder、DS note、Moments | Synology Drive、Synology MailPlus、Synology Chat、Synology LiveCam、Moments、DS audio、DS photo、DS video、DS cam、DS le、DS nder、DS note | |
共同作業ツール最大ユーザー数 | Chat:10 Office:200 | Chat:1,500 Office:3,400 | |
iSCSIターゲット | 10 | 128 | |
iSCSI LUN | 10 | 256 | |
ユーザー数 | 1024 | 2048 | |
グループ数 | 256 | 256 | |
並列接続数 | 100 | 500 | |
共有フォルダ | 256 | 512 | 512 |
スナップショット | - | 1,024 | 1,024 |
IPカメラ(無償) | 2 | ||
IPカメラ(最大) | 16 | 25 | 40 |
備考 |
アプリ
アプリとしてはスペックにも記載していますが、Synology純正のアプリとサードパーティ製のアプリが提供されています。大体どちらでも使えるものがよく使用されるアプリとなっており、以下のようなものがあります。
Synology製
Synology製のアプリで主なものは、Synology NASをCloudのように活用できる「File Station」、「Photo Station」、「Video Station」、「Moments」等があり、またメディア関係は「メディアサーバー」、「iTunes Server」などがあります。
また「VPNサーバー」や「プロキシサーバー」、「Webサーバー」などのアプリもあり、無料ドメインも提供されているため、自宅でサーバーを簡単に構築可能です。

サードパーティー製
サードパーティー製ではDB関係や「WordPress」、開発用の「PHP」、「Ruby」、「Python」、「Git」等様々なアプリが提供されています。

またVPNの機能については以下で紹介しています。
iOS/Androidアプリ
すべての機種で提供されている共通のアプリとDS420+、DS920+では提供されており、DS420jでは提供されないiOS/Androidアプリは以下となります。
共通アプリ
- Synology Drive
- Moments
- DS audio
- DS photo
- DS video
- DS cam
- DS le
- DS nder
- DS note
DS420+、DS920+のみのアプリ
- Synology MailPlus
- Synology Chat
- Synology LiveCam
ほとんどのアプリは共通で提供されていますが、ビジネスユースが考えられるメール、チャット、IPカメラのライブ視聴については上位機種のみの機能となっています。
MailPlusは強力な検索機能やメールの整理機能、タグ付け、アドレス帳やChat、カレンダーとの連携機能を持っています。

Synology Chatはチャットアプリであり、会話を一か所で集約して管理することができます。メッセージをブックマークしてToDoリストのように課題を管理したり、ハッシュタグを用いてタグ付けし、プロジェクトを管理したりすることができます。
チャットはスレッド形式で案件毎にスレッド建てしてデータを一元管理することもできます。家庭で使うときは話題毎にスレッド建てすることも可能です。

LiveCamはそのままIPカメラのライブ映像をリモートで閲覧可能なアプリとなります。
ハードウェア外観
外観はDS420+とDS920+のPlusシリーズはかなり似ていますが、DS420jのJシリーズはファンサイズやボタン配置等完全に別物となっています。
DS420jはDS220jやDS220+のように前面がパネルに覆われたタイプであり、一列にボタンが配置されるような作りになっています。ファンサイズが小さいため、幅も他のDS420+、DS920+と比べると30mmほど短くなっていますが、逆に奥行きが20mm程度長くなっています。
LANポートはDS420jは1ポート、DS420+、DS920+は2ポート用意されていますが、普通の方は1ポートあれば十分でしょう。
外部ポートとしてはDS420jとDS420+には拡張用のeSATAポートがありませんが、DS920+は4ドライブベイに追加して5ドライブベイを追加可能なeSATAポート×1が追加されています。



最後に
Synology DS420jは4ドライブベイのNASの入門機を求めている方にはおすすめのNASキットであると言えます。ただバリバリNASを使用したい、ホームサーバーとしても使いたいという方にはさらに上位機種であるDS920+をおすすめします。
同時に様々な機能を使用でき、遅延等をあまり感じずにストレスレスで使用することができます。また仮想化やサーバ機能をフルで使用することができ、自宅でVPNやWebサーバ、仮想サーバを立てて遊ぶなど、様々なことができます。
SynologyはNASキットのため、HDDは別売となります。故障しにくいおすすめのHDDをこちらで紹介しています。
DS220j、DS220+の比較を以下の記事をしていますので、こちらも併せてチェックしてみてください。