先日、購入したアストロプロダクツの手斧 AX947ですが、レザーシースやネックガードを付けて、刃もしっかりと研いでかなり使える手斧になりました。
ただし、刃先の部分は防錆のコーティングがされていないため、キャンプなどで使いやすいように黒錆加工をしましたので、やり方について紹介したいと思います。
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黒錆と赤錆の違い
赤錆を発生させないように黒錆加工をしますが、赤錆の何が問題で、黒錆だと問題ないのでしょうか?
以下の表に赤錆と黒錆の違いについて簡単にまとめていますが、簡単に言うと赤錆は普通に置いておいただけで錆が鋼材を侵食していき、また耐久性も低い錆となります。黒錆は処理に薬液等が必要になるため、自然界では侵食せず安定した錆となります。
名称 | 赤錆 | 黒錆 |
---|---|---|
化学式 | Fe2O3 | Fe3O4 |
種類 | 酸化第二鉄 | 四酸化三鉄 |
発生方法 | 水や酸素に触れることで発生。そのため、自然に発生する。 | 高温に熱するか、めっきする方法で発生。一部の鋼材・金属を除いて自然に発生しない。 |
腐食の分類 | 主に湿食(金属表面に、液体状態の水が存在するために起こる金属の腐食で、常温付近の比較的低い温度で見られる一般的な金属の腐食形態) | 主に乾食(金属が酸素、水蒸気(気体状態)、炭酸ガスなどの反応性気体との接触で直接反応し,金属表面に反応生成物(酸化物)の固体被膜を生成しながら金属が消耗する現象) |
性質 | 対象をぼろぼろにしていく。隙間が多く、金属組織の奥に進行していく。脆弱。 | 表面に膜を形成し、赤錆を防ぐ。黒皮材は、表面に酸化膜が形成されたもの。 |
そのため、酢やクエン酸などとタンニンを多く含む紅茶などを混ぜた薬液を作成し、漬け込むことで黒錆で表面を覆ってしまい、赤錆の発生を抑制する方法が黒錆加工になります。
この黒錆加工を施すことで、錆びやすい炭素鋼(カーボンスチール)の欠点を補い、切れ味よく、錆びにくい特徴を併せ持つ鋼材に加工することができます。
黒錆加工の方法
黒錆は四酸化三鉄、化学式で書くとFe3O4で表される物質ですが、金属の鉄から電子が二つ奪われてできる鉄(II)の状態と三つ奪われた鉄(III)の状態の両方のものが含まれています。
コーヒーやお茶などタンニンを含む液に漬け込むことで、水と酸素により生じた鉄(III)イオンの一部が、タンニンから電子を受け取り鉄(II)イオンになることで黒錆化します。またタンニンと反応したタンニン鉄が表面を覆うことで黒錆と同じような働きをします。
では早速黒錆加工の方法について紹介したいと思います。まず準備するものは以下の4つとなります。
準備物
- 黒錆加工したい鋼材
- 薬液(※後述)
- 刃の部分がすっぽり入る容器
- 脱脂材(パーツクリーナー、シンナー、ベンジン、エタノールなど)
まず薬液を作成していきます。
薬液
薬液はお酢系とタンニンを含む紅茶系の2種類を混合して作ります。大体3:7程度のざっくりで問題ありません。容器のサイズに合わせて薬液を混合してください。
お酢系
- お酢
- クエン酸
- レモン汁
タンニン
- 紅茶
- 緑茶
- コーヒー
タンニンは濃いめに作る必要があるため、鍋などに大目の紅茶、緑茶、コーヒーなどを入れて煮だします。今回は紅茶を使用したため、紅茶パック5~6個を入れて煮だします。今回はざっくりと鍋の半分くらいの紅茶を用意しました。そしてそこにお酢を1/4程度追加で入れます。
ものすごく簡単ですが、これで薬液は完成です。この後刃の脱脂などを行っている間、少し冷ましておきます。
刃の脱脂
黒錆加工を行う際には刃の脱脂などを行い、錆びの発生にむらができないようにします。脱脂材(パーツクリーナー、シンナー、ベンジン、エタノールなど)で油を落とした後、洗剤等で洗います。
私は面倒だったので、洗剤だけでやりましたが、案の定むらがしっかりできました。皆さんは脱脂を行うことをおすすめします。
薬液への漬け込み
薬液ができて、刃の脱脂が終われば後は薬液に刃を漬け込んで2~3時間待つだけです。

漬け込んだ最初は上の画像の様に元々の紅茶の色だけですが、少し経ってくると泡が発生し、少しずつ薬液の色も黒く変わってきます。2~3時間経過すると下の画像のように真っ黒になり、表面に泡が浮かんだ状態となります。

漬け込み終わったら、取り出して流水で洗い流します。取り出した直後はまだ表面の膜が不安定なので自然乾燥か、可能であればドライヤー等で乾燥させることをおすすめします。

乾燥後、鉱物油や乾性油を塗って表面を保護しておきます。私は乾性油のグレープシードオイルを料理用に買ってあるので、これをよく使っています。2~3日で乾燥して、表面がさらさらになってくれます。
完成後の姿は脱脂をあまりしっかりやらなかっため、研いだ先端部分のみ脱脂がしっかりされていたのか、反応がよく、その他の部分は若干黒錆加工が薄く仕上がりました。
まあ使っているうちに刃先など黒錆加工が取れていくかと思うので、実用上はそんなに問題ないかなと思っています。

まとめ
今回はアストロプロダクツの手斧 AX947を黒錆加工してみました。手斧だけでなく、OPINELのカーボンスチールやモーラナイフのカーボンスチール等のアウトドアナイフなど黒錆加工を行うことで落ち着いた黒い刃になり、また防錆性能も向上するため、刃物の手入れが好きな方はぜひやってみてください。